95文山包種茶製茶記

今年の春茶はこうして生まれた

民国95年(西暦2006年)春茶の季節、今年はいつから実習を始めようか蘇文松茶師と何度も連絡。異常気象が普通となりつつある昨今、この日程を決めるのは至難の技。そして、はずしてしまった(涙)。参加してくれた皆様、私の日ごろの行いが悪く雨空、本当にすみませんでした。

台北中正国際飛行場に着いたのは午後8時頃、空には星がいくつか見えていました。友人に電話してみると今日はいい天気だったよの返事、これはラッキーと思いながら後発組を空港で待っていました。関西から参加してくれた女性2人組は午後10時前の到着予定、時間になっても現れません。第一ターミナルから第二ターミナルの移動で迷子になったのか不安がよぎります。そして、私と一緒に到着しているはずだったH家の3人、実はお子様のT君が成田寸前の京成の中で急病になってしまい救急車で搬送されてしまったのです。いつも元気なT君、容態はどうなったのか心配しながら日本へメールを送り無事回復を祈りました。時間は午後11時近く、そろそろ成田から出発の茶参福氏と茶楽教室のみよちゃんが到着する時間。到着ロビーの中央へ移動して成田組を待ちます。この間も関西組は音信不通、心配していると携帯に着信。こちらのロビーに到着したようです。場所を指示して電話を切ったとたん、成田組が現れました。なんと絶妙なタイミングなんでしょうか。

走水 走水中の茶葉

これで前半組が勢ぞろいしました。早速車に乗り込み、今回試験的に行った前泊、蘇茶師の元へ空港より一直線で向かうことにしました。車に乗った早々、雷鳴が稲光がそして大粒の雨が、嗚呼・・・天は我を見離したか。。。車が坪林に近づくにつれ雨がひどくなってきました。日も変ったころ、蘇茶師の家に到着、相変わらず雷鳴と雨が降り続いています。早速荷物を降ろし見回すが誰もいません。たぶんここだと思い製茶場所へのぞきに行くと、包種茶の青い香りが充満している中で蘇志成茶師が走水の真っ最中。今日の昼間はいい天気だったので美味しいお茶ができるよと満面の笑顔。作業をしばらく手伝い、明朝に備え男女二部屋に分かれて就寝。雨の凄い音を聞きながらいつか夢路に入りました。

翌日は6時前に目が覚め、製茶場に降りていくとパパ茶師が見回りをしていました。朝のご挨拶をして茶葉の確認、もう少し時間のかかりそうな香りです。外をのぞくと雨は少し小降りですが、まだまだ茶摘するような天候ではありません。しばらく様子を見ることにして朝ごはん、サツマイモの入ったおかゆが最高に美味しい。食事のあとはお決まりのお茶、お茶、お茶、そして製茶作業を先に予習することとなりました。パパ茶師とママの二人コンビで殺菁、揉捻、乾燥と一連の作業をする中、お手伝い(邪魔かも)しながら勉強です。作りたてのお茶も少しずつ取り分けて、味見することとしました。

パパ茶師殺菁 パパとママの共同作業

茶摘は茶葉の表面より夜露が消えたときに開始するのが基本です。ぎりぎりまで待ってみましたが天候の回復は望めそうもないので、茶摘を強行することとしました。われわれ参加者だけでは1斤づつ持ち帰るだけの茶葉を摘み取るのは到底無理なので応援を頼んでおきました。蘇文松茶師のお姉さん、妹、隣のおじさんとおばさん、蘇文松茶師の奥さんが応援してくれました。茶摘の場所は渓流近くの斜面、この場所より多くの頭等奨を輩出している最高の場所です。斜面の傾斜はきつく、足元はぬかるみ滑りやすく、石の上に乗ると滑ってしまいます。こんな場所での茶摘、開始時は小粒の雨が15分ほどで大粒の雨になり、われわれは一足先に退却を指示されました。この雨の中応援部隊は茶摘を続けてくれます。感謝してもしきれないですね。帰り道雨宿りしながら、この地の守り神にお祈りをしてきました。

茶摘作業 文松茶師の奥様と参加者

温風萎凋

自然相手の製茶作業、悪天候を嘆いていても始まりません。とりあえず自分たちで摘んだ茶葉をざるに広げて、茶摘部隊の帰還を待ちます。土砂降りの雨の中、カゴいっぱい茶葉を摘んで戻ってきました。早速、温風萎凋行うために別室へ移動。パパ茶師が場所のセッティングをしてくれガスコンロに火を入れました。文松茶師は茶葉を手際よく茶葉を広げてくれます。

みんなでこれだけ 文松茶師温風萎凋

これでしばらく休息です。日光萎凋の場合、日差しの強さ風の強さによって数分から30分程度と目が離せませんが、温風萎凋の場合、茶葉の表面の水分を飛ばす。次に萎凋開始させる、こんな手順で進みますので時間がたっぷりあります。

走水

みんなで走水 文松茶師のお手本

写真に写っているブルートレーナの美女は文松茶師のお嬢様、こんな女の子に育ってくれたら最高!こう思わせてくれる女の子です。いつもは手伝ってくれないのに、今日はお手伝いしてくれるので文松茶師は満面の笑み。走水とは室内萎凋のことで文山地区ではこのように呼びます。茎に含まれている水分を葉の先より抜いていくという微妙な作業です。この時点で茶葉に傷をつけてしまったら茶葉は死んだ!になってしまいます。よくTVでやっているような揉むということはありえませんね。これから半日以上かけてゆっくりと水分を取っていきます。このときに最適な温度と湿度の管理をします。具体的な温度はノウハウなので教室でお話させていただきますね。

志成茶師のざる振り指導 志成茶師のざる振り指導

走水といえば何度も行う「ざる振り」これができれば一人前、などといっている私も満足にできません(笑)、いつも文松茶師の失笑を買っています。今回は志成茶師の指導、後ろについてもらい振り方を教えてもらうのですが、なかなかうまくいかないものです。ざるも重いし茶葉も重い、しかも回を重ねるごとに茶葉量が増えてくるのでなお大変。しかし、このざる振りにはまってしまう人が多いのも、魔法のように茶葉がざるの中心に一瞬で集まってしまうからでしょうね。これは体験した人しかわからない魅力のひとつでしょう。5回の走水作業を行い、深夜就寝となりました。翌朝の茶葉がどんな香りになっているのか楽しみです。

作業していないときには、、、楽しみが

走水は2時間間隔で行う作業以外は時間が自由になります。明るい時間は茶畑を散歩しながら実際の茶葉を確認、青心烏龍種、金萱種、翠玉種、武夷種など違いを覚えます。暗い時間になると宴会の始まりです。夕食はにぎやかにがモットーの台湾、丸テーブルを囲む手にはコップが必須。いつもは58度の白酒で酔っ払ってしまうので、今回は久米仙と焼酎、日本酒を持参しましたがあえなく討ち死にしてしまいました。結局は酔っ払ってしまうまで干杯(乾杯ではなく)してしまいました。少し酔い覚ましをしようと散歩に出たら、隣の家でお茶を飲んでいました。ここでしばらくお茶をご馳走になりながら休憩、少し水分補給ができて楽になりましたが、酔っ払ってフラフラです。それでも作業のときはしっかりと行う、これが文山の茶師です。

隣のおうちで酔い覚まし 空いた時間に製茶作業

朝は食後、製茶作業のお手伝い。文山包種茶は茎がついた状態で手摘みで茶葉を摘み、そのままお茶作りします。乾燥器から出てきたときは茎だらけのお茶としか見えません。でも飲んでいる文山包種茶には茎がほとんどありません、それはこの製茶作業で、茎・熟しすぎた固い茶葉・醗酵むらの茶葉などを取り除いているからです。手間のかかる作業だということは今回の参加者全員よくわかったと思います。この作業を行った後、焙煎器にて焙煎して長期保存に耐えられるようぎりぎりまで水分を取り除きます。製茶実習では時間の都合で茎のついたまま焙煎して持ち帰ります。

殺菁・揉捻・乾燥

パパ指導による殺菁 パパ茶師の指導

走水の終わった茶葉は一気呵成にお茶として仕上げていきます。まずは醗酵を止めてしまう「殺菁」、パパ茶師が指導してくれます。釜の温度を調整して、茶葉を一気に投入していきます。3分ほど経過すると釜の中からは湯気が勢いよくあがり、香りが変化していきます。この香りの変化を捉え、最高の状態でとめるのが茶師の腕の見せ所。何度か香りと手触りをチェックしながら時間を計ります。

揉捻 揉捻後の茶葉

殺菁の終わった茶葉は熱いまま揉捻します。ここで温度を下げては茶葉がだめになってしまいます。鉄釜で加熱された茶葉は湯気を上げながら揉捻器へ移され揉みこまれます。ここで茶葉の形が決まります、揉みこみが足りないとお茶の味が良く出ず、茶葉の形もモソッとして文山茶らしい形にはなりません。揉みこみ過ぎると茶葉の繊維は切れだらしない形のお茶になり、渋く苦いお茶になってしまいます。ここも茶師の腕の見せ所ですね。一連の作業の中でこの作業が一番危険なので参加者も茶葉を見守るだけです。揉捻の終わった茶葉はまだ湯気を上げ温かい状態です。このままにしておくと固まってしまうので、茶葉をほぐす作業を行います。ここまで来れば後は乾燥、茶葉を乾燥機に入れてゆっくりと温風で乾燥します。今回は連続式乾燥機を使い2回乾燥を行いました。

揉捻 揉捻後の茶葉

焙煎を行い、出来立てを試飲

焙煎器へ 焙煎後の茶葉

焙煎器に茶葉を入れて、2時間かけゆっくりと水分を取り除きます。最終0.3%程度まで抜ければ完成ですね。もう少しで美味しいお茶が飲めます、楽しみの時間が近づいてきました。まずは揉捻したての茶葉、このお茶を冷凍すると「冷凍茶」ですね。もともと、袋揉捻をかけるのが追いつかず、暇なときに作業を行うべく作り出されたお茶。半製品なので香りはいまひとつ、でもお茶の甘みは強く感じます。乾燥機から出てきた茶葉と焙煎器から取り出した茶葉をそれぞれテイスティング。やはり焙煎したものは香りに深みがあり、乾香がすばらしいですね。昨年10月に雨の中作ったお茶と比較すると数段良いできばえです。これは熟成後が楽しみです。

揉捻したての茶葉 完成した茶葉のテイスティング

記念撮影

出来上がった茶葉を各自袋詰め、お土産に持ち帰ります。最後に参加者で記念撮影です。本当に楽しい製茶実習でした。関西より参加してくださったUさん、Sさんありがとうございました。茶楽教室の見世ちゃん、弟子の茶参福氏ありがとうございました。毎回新しい発見があります。これからも精進して台湾茶を極めたいと熱望する茶壹福です。後半の報告は次回に

袋詰め 記念撮影
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